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強度不足のコンクリート

2016年10月21日「金曜日」更新の日記

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一九九五年、NHKテレビは五回にわたって阪神淡路大震災特集番組を放映した。同年九月三〇日に放映された「建物を強くするには」では、破壊されたマンションのコンクリートの品質に焦点をあてていた。一階がつぶれた六階建てのAマンションの天井大梁と小梁の強度は、それぞれ一八〇キログラム/平方センチメートルと一二四キログラム/平方センチメートルだった。小梁の強度は、設計基準強度ニ一○キログラム/平方センチメートルを四〇%も下まわる低強度だった。このように低強度になった理由は、コンクリートの空隙率の測定結果がしめしている。コンクリートの強度は空隙率によって決まるからである。このマンションの大梁と小梁のコンクリートの空隙率は、それぞれ一八・六%と二一・九%だった。では、土木構造物のコンクリートは、どんな値なのだろうか。倒壊した山陽新幹線(野間地区)、阪神高速道路神戸線(西宮)および阪急神戸線(観音寺付近)などの高架橋柱から得られたコンクリートについて測定してみると、空隙率は一四・六%、一四・四%、一四・二%だった。Aマンションの小梁の空隙率は、高架橋柱にくらべて五〇%も大きい値である。これらの高架橋の設計基準強度は二四〇~二七〇キログラム/平方センチメートルと、Aマンションの梁よりも高いが、それにして二一・九%という空隙率は異常である。なぜ、このようなスカスカのコンクリートが打ち込まれたのだろうか。それは、水増し生コンクリートの使用による。スカスカのコンクリートは劣化も急速に進行する。コンクリートの劣化の速度は、中性化深さによって知ることができる。Aマンションの小粱の中性化深さは五センチ、これにたいして山陽新幹線や阪神高速道路の高架橋柱の中性化深さは三センチていどだった。Aマンションと同じ年数を経た健全なコンクリートの中性化深さはニセンチであるから、Aマンションのコンクリートの劣化は健全なコンクリートの約二・五倍の速度で進行していたのである。コンクリートの強度不足は、とくに建物基礎に多く見られる。埼玉県下のある分譲マンション(三一棟一〇〇〇戸)では、建設一〇年後に全棟の建物基礎からコンクリート試料を抜きとって強度を調べたところ、三棟のコンクリートが設計基準強度一八〇キログラム/平方センチメートルに達していなかった。その後、白華現象が顕著にあらわれた二棟(M棟とS棟)の建物基礎から、コンクリート試料を抜きとって強度を調べた。試料は、白華現象がいちじるしい地上部分と地下部分から採取した。M棟のコンクリートでは、地下部分の強度が二五四キログラム/平方センチメートルだったのにたいして、炭酸化による変質が基礎断面の二五%に達していた地上部分の強度は一六四キログラム/平方センチメートルであって、ほとんど変質していない地下部分にたいする強度低下は三五%に達していた。一方、S棟では、地下部分の強度が一九八キログラム/平方センチメートルだったのにたいして、炭酸化によるコンクリートの変質が基礎断面の一五%ていど進行していた地上部分の強度は一四二キログラム/平方センチメートルであって、地下部分にたいする強度低下は二八%だった。このような強度低下は建設後、わずか一五年でおこっていた。不安を感じた管理組合は、分譲した旧住宅・都市整備公団(現都市基盤整備公団)にたいしてくりかえし善処を要望していたが、具体的な対応策はとられなかった。一九九五年、阪神淡路大震災によって多くのマンションが倒壊した。この約一週間後、旧住宅・都市整備公団から管理組合にたいして、「強度低下のいちじるしい九棟の建物基礎の補強工事を実施したい」と申し入れてきた。マンションが建設されてから二〇年後のことだった。このマンションのように建物基礎のコンクリートの強度が設計基準強度に達していない例は、一九七〇年代以降に建設された建物に多く見られる。原因としては、炭酸化による劣化が急速に進行すること、建物基礎には品質の劣る生コンが使われやすいこと、などが考えられる。基礎のコンクリートが脆弱な建物は、たとえ、その上につくられる建物躯体の品質が健全なものであっても、建物全体の安全性や耐久性は劣ることになる。地下駐車場の地下外壁からの漏水でピッ卜(床に設けたフタつきの溝)が水浸しとなったり、外壁に大きいひびわれが発生するなどの、クレームもあとを絶たない。本来、地下水位の高い場所に地下室をつくる場合には地下外壁の外防水工事が必要であるのに、これが省略されるのである。外壁に形成されているジャンカや打継ぎ目などの欠陥部分から漏水がおこるのはとうぜんのことである。なお、ベランダが傾いた例や自然落下した例もある。最大の原因は、鉄筋を誤って配置した施工ミスである。

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