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若者の家族形成と住宅の関係

2016年11月8日「火曜日」更新の日記

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各国の住宅事情を概観、比較し、家族形成との関係について考察したい。『(1)各国における住宅事情』各国における住宅事情の概要を示したものである。1970年代後半以降、多くの先進諸国では、住宅政策が持家促進政策に傾斜しだし、公共借家(社会住宅)セクターの縮小・残余化が進んできた。しかし、近年において、住宅政策の結果ともいえる住宅事情のあり方は、国によって大きく異なっていることが確認できる。イギリスは、持家が約7割をしめ、住宅ローン債務残高のGDP(国内総生産)に対する割合がハカ国のなかで最も高いなど、持家の市場化が進んでいる。しかし同時に、公共借家(社会住宅)が2割と依然多く、公的住宅手当の受給率が高いという特徴も有しており、社会保障としての住宅にも、多くの費用を費やしている。住居費負担が重い世帯の割合は、わずか5%になっている。スウェーデンやフィンランドの北欧諸国をみると、近年持家率が急速に上昇しつつあるものの、公共借家率が依然高く、さらに、公的住宅手当が普及している様子がわかる。また、フランスとドイツの大陸ヨーロッパ諸国は、北欧諸国と同様の傾向をもっている。ドイツに関しては、民営借家が5一%と多くをしめているが、そのなかには社会住宅に近い性格をもつ住宅が多く含まれていると考えられる。一方で、イタリアやスペインの南欧諸国は、持家率が約8割と非常に高く、借家率(とくに公共借家率)が非常に小さいことが特徴である。とくに、イタリアは、GDPに対する住宅ローン債務残高の割合が%と最も低いことから、持家(住宅ローン)の市場化が進んでおらず、人びとの住宅ローンへのアクセスが容易でないことが示されている日本についてみると、持家率は南欧諸国ほど高くないものの、公共借家率が7%と非常に低いこと・住宅に関する社会保障支出が著しく少なく、また公的住宅手当の給付が普及していないこと、住居費の負担感が非常に大きいこと、などの点で南欧諸国と共通する。しかし、日本は民営借家率が高いという点で、南欧諸国とは異なっている。また、イタリアと比較すると、GDPに対する住宅ローン債務残高の割合が高く、持家、借家ともに市場化が進んでいる。(2)若者の居住の自立と住宅情では、住宅事情と若者の家族形成は、具体的にどのような関係をもっているのだろうか。近年のEU諸国を対象とした出生率と住まいに関する比較研究では、持家率が非常に高く、さらに住宅ローンの市場化が進んでいない国(イタリアなどの南欧諸国)において、超少子化の動向がみられることや、借家の利用のしやすさが、若者の自立した居住への移行に大きく影響していることなどが明らかになっている。若者の家族形成と住宅に関する研究において、キーワードとなっているのは、住宅の「利用可能性」や「アフォーダビリティ」であろう。すなわち、適切な経済負担で居住可能な住宅が十分に供給されており、より多くの人がそれに容易にアクセスできることが、若者の家族形成を促進する大きな要因になっていると考えられる。ここでは、前掲のハカ国に、さらにもう7ヶ国のヨーロッパ諸国を加え、住宅の利用可能性やアフォーダビリティを示す項目と世帯形成率の関係をみてみたい。持家率と世帯形成率の関係をみたものである。これによると、これまでの研究でも指摘されてきた通り、持家率が高くなるほど世帯形成率が低い、つまり、若者の居住の自立が遅いという関係がある。しかし、日本の世帯形成率は南欧と同水準で低いのに対して、日本の持家率は南欧ほどには高くない。つぎに、公共借家(社会住宅)をみると、その割合が高いほど、世帯形成率が高いという傾向がみられる。日本の公共借家率は7%と非常に低く、低い世帯形成率と大きく関係していることが示唆される。一方、借家であっても、民営借家の割合は、世帯形成率との有意な相関関係はみられなかった。また、住居費の負担感と世帯形成にも、相関がみられた。家賃や住宅ローン返済といった住居費が「非常に負担」とする世帯の割合が高いほど、世帯形成率は低い傾向がある。住居費負担が重い世帯の割合は、イタリアが群を抜いて高いが(41%)、他国とくらべて、日本も相当に高い(22%)ことがわかる。さらに、公的な住宅手当を受給している世帯の割合と世帯形成率との間にも相関がみられた。受給率が高いほど、世帯形成率が高いという関係がある。若者の居住の自立が遅い日本や南欧諸国では、公的な住宅手当の受給は皆無に近い。日本の持家率は約6割であり、高い世帯形成率を特徴とするフィンランドやフランスと同水準である。しかし、公共借家(社会住宅)の供給が非常に少なく借家のほとんどは民営であること、公的住宅手当といった住宅に関する社会保障が皆無に等しいこと、また、住居費負担が非常に重いことが、若者の居住の自立の遅れに大きく影響していることが示唆される。

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