トップ > 平成28年12月> 26日

債権者取消権・否認権

2016年12月26日「月曜日」更新の日記

2016-12-26の日記のIMAGE
何故金銭債権からの回収に関することについて,説明をしておかなければならない。債権者取消権・否認権の対象は広汎であるが,一人の債務者について複数の債権者が存在し,その内の或る債権者の行った広い意味での金銭債権の回収行動(後述する)に対して,他の債権者が債権者取消権を行使する場面を中心に検討する。このような場面として例えば次のようなものを念頭に置くことができる。AはBに対して甲債権を有するが,Bは他にも債権者Cから融資を受けており,債務超過に陥っていた。ところがBはCに弁済(偏頗弁済と呼ばれる)をしたため,Aはこれを詐害行為として取り消したという場合である。このときCからBに回復されるべき金銭から取消債第権者Aが満足を得るならば,それはAの一種の債権回収であり,例えばBがCに対して乙債権を有している場合にこれに対してAが甲債権に基づいて債権執行をかけた場面と類似する。注意すべきことは,この場合には,債権者取消訴訟が,無資力に陥っている債務者BをめぐるAとCとの間の債権者対債権者の争いとなるということである。この類型の債権者取消権に特殊な考慮が必要なことは早くから指摘されてきたが,以下ではこの場面に検討を限定する。まず,特にこの場合について,取消債権者に事実上の優先弁済を容認している判例法理を取り上げ,その是非の検討を通じて債権回収の秩序をどう構想するかについて考察する(1)。また,個別債権者の債権者取消権の行使は,倒産手続開始後は管財人等による否認権の行使に吸収されるが,この両制度の関係をどのように考えるかは,手続諸段階を通じた実体法の変容の観点からの好個の素材の一つとなる。上記の偏頗弁済の事案は,近時の債権者取消権の要件論と,故意否認の要件論の展開にとって,重要な役割を果たしており,平時実体法における倒産的考慮の必要性を示唆するものとなっている(Ⅱ)。最後に,私的整理の場面では,債権者取消権が簡易な倒産手続の枠組みとして機能していることが早くから指摘されてきた。この場面の分析から,債権者取消権をめぐる平等主義と優先主義との対立についての新しい視角を提示する(Ⅲ)。

このページの先頭へ