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ペットにお焼香

2017年2月15日「水曜日」更新の日記

2017-02-15の日記のIMAGE
ルールはあるが、ペットと暮らせることで、マンション暮らしがより楽しくなったという人は多い。夫に先立たれ、子供たちが巣立ったため、」人暮らしをしている女性もその一人で、シーズーを飼っていた。女の子(ペットを飼っている人はオスを男の子、メスを女の子と呼ぶ)の中でもひときわおとなしく、むしろ臆病な性格で、知らない人を見ると飼い主の陰に隠れ、震えているような"女の子"だった。管理員の杉村は、その子が気になり、飼い主に声を掛け、少しずつ距離を詰めて、やがてそっとなでてあげるまでになった。杉村が首のまわりを掻いてあげると、小さな舌で杉村の手をなめた。その子を見かけることが少なくなり、どうしたのだろうと杉村が思っているうち、マンション内のペットクラブの方から亡くなったことを知らされた。17歳で、老衰ということだった。犬好きで、実際に飼ったこともある杉村は、飼い主の気持ちが痛いほど分かり、餌の缶詰とお線香を持ってその住戸を訪ねた。家の中では、写真が飾られ、お線香が上げられていた。杉村は手を合わせ、飼い主からペットの思い出話を聞いた。その子を飼ったのは、今はなき夫。ペットショップでも、他の犬に気圧され、エサも満足に食べることができないシーズーがいた。飼育係が、その子だけ隔離し、別にエサを与えていた。その情けなさがむしろ気に入り、「あの犬を」と購入したのである。そのとき、飼育係は、「えっ、この子?」と驚いた。「ほかに、元気な子がいっぱいいますが・・・」いや、どうしても、その子が欲しいと言うと、飼育係は「それでは、準備をします」とブラッシングを始めた。ブラシを掛けながら、何か話し掛けているようだった。「大事にされるのよ」「あなたのこと忘れない」そんなことを話し掛けているように思えたそうだ。家に来てからも臆病で、震えながら歩いていた。それでも、慣れて来ると、やんちゃになってきて、走り回るし、いたずらもする。元気になったので、」度、マンション中庭の芝生に連れて行ったことがある。「さあ、ここで思いきり走りなさい」と芝生に下ろした。「でも、その子は、足を上げて嫌がるの。芝が痛いよってね」本当に、この子はねえ、と夫人は涙を拭きながら、しかしほほえみながら写真を見つめていた。杉村も、首のまわりを掻いてあげると舌でなめてくる、その感触を懐かしく思い出して、涙が止まらなかった。夫人は、「話せてよかった」「一緒に泣いてくれて、うれしかった」と何度も杉村に言ったのだった。

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