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おばあちゃん理事長

2017年2月19日「日曜日」更新の日記

2017-02-19の日記のIMAGE
マンション管理組合で新しい役員と理事長が決まった。新理事長は、80歳を超えたおばあちゃんだった。おばあちゃんといっても、目も耳も達者で、週に2回太極拳の教室に通い、俳句の会と小説教室にも通う元気さ。理事長に推されたときも、「これから、?年、やりがいがあるわ」と喜んでいた。一方で、管理会社の担当女性社員・菊池をつかまえ、「分からないことが多いと思うけれど、こっそり教えてね」という気づかいも忘れなかった。管理会社の菊池はまだ20代。まさに「おばあちゃんと孫」という年齢差だが、おばあちゃん理事長が大好き。管理の仕事以外のおしゃべりも楽しんでいた。ある日、おばあちゃん理事長から会社に電話が入った。「理事長宛てに、よくわからない書類が郵送されてきたのよ。大事な書類らしく、〃重要"のハンコも押されている。アナタ、ちょっと来てくれない」管理会社からそのような書類を発送した記憶はなかった。保険関係か。なんだろうと思いながら、菊池はおばあちゃん理事長の住戸に向かった。「ほら、この書類」おばあちゃん理事長から渡された書類には、「管理会社変更の勧め」と書かれていた。管理組合理事長宛てに、「管理会社を我が社に代えませんか」というセールスである。"ポンドは、私が見てはいけない書類だった"でも、おばあちゃん理事長には分からない。「ねえ、その書類、なんなの?」「これはですねえ、私の管理会社から、別の管理会社に乗り換えせんか、というお誘いです」「あら、まあ」しばらく二人は沈黙。それから同時に吹き出して、大笑いした。「あなたに見せちゃだめよね」「見せられても困ります」まったくだと、また大笑い。「でも、私は、あなたとのこういう関係が好きなの。あなたの会社を代える気はないわ」その後も、菊池はたびたびおばあちゃん理事長を訪ね、ふるさとの話やバルコニーに来て仲よくなったスズメの話などをした。その想い出は、担当が代わった今も、菊池の胸に大切にしまわれている。

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