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新聞でみる借地借家の紛争事例 その1

2017年2月22日「水曜日」更新の日記

2017-02-22の日記のIMAGE
 ここ二、三年の新聞を通して読んでみますと、借地・借家についての事情が、かなり大きな変化をみせていることがわかります。すなわち、現行の借地法や借家法が必ずしも「金科玉条=重要な規則」ではないという考えかたです。  その第一は、申すまでもなく借地借家法の改正についての動向です。この点については、法務省や建設省の考えかたとその進展についての努力を大きく評価しないわけにはいきません。 そして第二に気付くことは、明渡し事件で借家人側がいわゆる暴力団がらみのときには、明渡しのための「正当事由」がかなり弾力的に、幅ひろく認められ始めたということです。さらに第三は、最近の地価狂乱が借地借家の正常な関係を、いわゆる”地上げ屋”などが介在して、 ぶっ壊し始めたことも挙げなければなりません。こうして、地主家主をがんじがらめにした借地借家の関係は、大きな転換期を迎えています。  それでは、注目すべきどんな新聞報道があったのかを、最近の事例から拾って紹介することにいたします。  とにかく、その一つ一つをじっくりと読んでいただき、地主家主としての心構えをしっかりとつかんでほしいと思っているのです。   〈その1・頑張ったビル女社長の例〉  =無断使用、立退きを求めて三年= この事例は東京・池袋にあるビル所有者とそのビルに潜りこんだ暴力団との部屋の明渡しをめぐっての戦いです。訴えていたのは池袋のKビルの五階にすむ同ビル所有者のWさんで、訴えられたのは暴力団Aの組長と串焼きチェーン店B社長です。  もともとWさんは自宅で美容院をやっていたのですが、昭和五六年に地下鉄建設工事による道路拡張で自宅の敷地の一部が削られるため、美容院を取り壊して五八年八月、五階建てのKビルを建てました。目的はKビルの一階から四階までの各階を二部屋ずつの計八室に区切り、 賃貸しの事務所として家賃収入で生活しようという予定でした。そして五八年匸一月、Wさんは串焼きチェーン店の事務所に使うとの約束でKビル三階の一室をB社長に貸したのですが、実際に入居したのは暴力団Aでした。Aはこの部屋に若い組員を寝泊りさせ、ドアの上にテレ ビカメラを据えつけて外部からの侵入に備え、組事務所として右三階の一室を使い始めたのです。そして間もなくこの暴力団A事務所は警察の家宅捜査を受けるなど、近所にも暴力団事務所であることがわかりました。    Kビルの入り口には一目でそれとわかる組員がたむろし、また派手な外車が停まったりするので、池袋の一等地なのに八部屋のうち四部屋が空いたままIということは、予定していた家賃収入が半分ということです。ビル建設の借金を返すため親類などからも借金したりで、Wさんは体調まで崩したということです。たまりかねたWさんは、三年前から串焼き店のB社長や仲介した不動産業者に頼んでA組長に立退きを求め、思いきって六一年一〇月には「賃貸借解除」を通告した内容証明郵便を出したのですが、返事なし。ついにWさんは六二年二月に、無断転貸(民法六一二条)や組員の宿泊利用などの契約違反(民法四一五条)を理由に「家屋明渡し請求」の訴えを起こしました。考えてみてください。ここまでくるのに三年かかっています。そして六二年の六月、それまでへ理屈で応対してきた暴力団側が口頭弁論で「立ち退くことにした」と、和解の方向を示してきたようです。    Wさんの強い態度、何回もおとずれた警察への相談や弁護士の努力などが実を結び、暴力団側もこれ以上のトラブルはまずい、と判断したのだろうと「読売新聞」は報じています。しかしWさんの弁護士は「相手の態度が軟化したのはよいが、和解を持ちかけることで裁判の引延しを図ったり、法外な立退料を要求するケースもあるので、相手の真意を慎重に見きわめる必要がある」といっています。さすがに弁護士の読みは深いものです。  実はこのWさんは女性です。  「……暴力団相手に、一人でここまで闘ってきてずいぶん心細く怖かった。他にも私のようなヶ-スで泣いている人は多いと思うので、互いに横の連絡を取り合って勇気を持って闘っていける組織があればよいと思います」と語っていますが、これが傾聴すべき意見であることは、地主家主さんの誰もが考えることであることはいうまでもありません。

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