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新聞でみる借地借家の紛争事例 その2

2017年2月23日「木曜日」更新の日記

2017-02-23の日記のIMAGE
〈その2・頑張ったラーメン屋さんの例〉 =民間会社の再開発目的は立退きの理由にならない=  実はこの事例、貸主側に不利なケースなのですが、あえて紹介することにします。というのは、立退きの「正当事由」「自己使用の必要性」の解釈など、いま問題になっている借地借家法の改正案にも、今後大きな影響を与える判決であるからです。  場所は東京・神田ですから、地上げと狂乱土地の腸の中です。神田で古いビルを取得した大手不動産会社である「住友不動産」が、最後までビル内に居残っていた一軒のラーメン店のYさんを相手どって部屋の明渡しを求めましたが、裁判所はこの明渡し請求を棄却した(昭和六二年六月一六日・東京地裁)というのがその大筋です。  少し詳しくこの事例を見てみましょう。住友不動産は、無条件にYさんに。出てくれ”とい つているわけではありません。八〇〇〇万円もの支払い(立退料)と引換えに立退き請求をしたのです。その背景はつぎのとおりです。  Yさんは昭和五二年に、当時はSさんの所有のビルー階部分を賃借りしてラーメン屋をしていたのですが、五八年三月、住友不動産はSさんからこのビルを買収しました。そして住友不動産はこのビルを含む周辺一区画(約三八〇坪)の土地に近代的ビルを建築する計画をたて、着々と土地買収をすすめ、Yさんにも八〇〇〇万円の立退料を提示したうえで立退き(家屋の明渡し)を求めたのです。ところがYさんにも立ち退けない事情があります。自分の経営する三つのチェーン店のうちでこの店舗は売上げのある(全店の約四〇パーセント)重要な拠点だから、これに見合う代替店舗は見込めない卜住友側の提示した八〇〇〇万円でも出ていくわけにはいかぬ。私は経営者として、従業員やその家族を守らなければならないIとして立退き請求に応じなかったのです。  前述の判決までには、簡易裁判所での何回もの調停があったのですが不調に終わり、結局、東京地方裁判所が「……y」うした(私的=民間の)再開発目的は、賃貸借の解約申入れの正当な理由には到底なり得ない」と判決したのです。  判決にいたる理由は、つぎのようなものです。  ・ 住友不動産は高層ビル再開発計画でYさんに立退きを請求したのだが、住友自身がその 建物を使うわけでもなければ、同ビル自体もまだ老朽化したともいえない。そのうえ、その再開発は公共的な市街化整備計画に基づくものではなく、さらに着工時期も不明確である。  ・ ラーメン店を経営するYさんは、十数人の従業員を使って一日に平均すると三〇万円前 後の売上げがあり、この店舗を引き続ぎ使用する必要がある。  ・ 右に述べた再開発目的と賃借人(Y)との事情を考えあわせると。住友の立退き請求には「正当事由」がないものであり、また住友側がYさんに移転先を紹介し、かつ八〇〇〇万円の立退料を提示したとしても、これによって正当事由が備わったとみることはできない。  -こんなわけで、住友不動産が街のラーメン屋さんに裁判で負けたわけですが、ここで注目したいのは右の判決理由の・です。すなわち「公共目的、公共事業でない民間ディペロッパでは、正当事由を認める理由は希薄である」とした点です。  後で、紹介しますが、いわゆる借地借家法の改正試案(「問題点」)では、正当事由の拡幅の具体的な事由として「都市の再開発」を考えているわけですが、少なくとも右の判決は再開発を公共と民間に区別したことにより、右試案に水をさす方向のものです。この判決が地主家主側に大きな打撃にならなけれぱと思う次第です。  とくに小規模で、昔から、好意的に土地や家屋をガマソして貸している小地主、小家主に影響のないことを切に願うものです。

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