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この模範回答がすべてをダメにする

2017年2月27日「月曜日」更新の日記

2017-02-27の日記のIMAGE
ある雑誌に、こんな法律相談が出ていましたので、まずはその要旨を紹介します。  〔質 問〕 私は借家で商売をしているのですが、こんど家主から一二年後には明け渡してくれといわれました。敷地の持ち主は別で、その地主が家主に「一二年後の借地契約の終了で、その後の契約更新はできない」といってきたとばっちりが私にきたのです。まずいことには、家主は地主に「その時は更地にして返す」という書類まで渡したとのことですが、私としてはどうすればよいのでしょうか。  〈注〉卜もともと借地契約は長期(事情によって二〇年から、三〇年~六〇年卜借地法二条)にわたるものですから、地主が気をつかって一二年後の更新拒絶を前もって通知してきても、当たり前かも知れません。―ところが、  〔答 え〕 地主の通知と家主の文書による返地の約束は、借地法上の効力はありません。つまり借家人には借家法の保護があり、一二年後に家主が借地権を放棄したとしても、借家人であるあなたは、自分の立場で問題を判断すればよいのです。  さて、借地人が借地期間満了のときに地主に対して「更新請求」する権利は借地法で認められた正式のものです(同法四条)。これと別に借地法は、この権利を事前に放棄するという約束 は「借地人に不利な契約」であり、効力はないとしています(同法一一条)。したがって「一二年後には土地を返す」という約束や文書は何の効力(強制力)もありません。  それに、家主が借家契約を解除するためには、家主が自分でその家を使用するなどの、いわゆる「正当事由」がなければなりません(借家法一条ノニ)。つまり、この正当事由がないかぎり借家契約の解消はなく、したがって家主も地主もあなたが住んでいる家屋の取壊しもできません。すなわち、あなたはこの問題で心配することはほとんどないのです。  ここで借家人のあなたが注意することは、もし家主が、これから一二年を経過した、つまり借地期間満了の時点で借地を地主に返す約束をしたときは、その約束は借地法上も有効であるという点です。こうなると、前述の借家人を追い出すには「正当事由」が必要であるということ、裏返せば、地主が土地を返すと約束しただけでは家主の明渡し請求に正当事由があるとはいえず、さらに引越し先を提供したり、立退料を支払ったり、といった必要があるでしょう。   〈注〉-この答えは、実はかなり高名な弁謾士さんのものです。現行の借地法、借家法によるかぎり、これは模範回答です。  しかしこの回答は、地主・家主さんにとっては血も涙もない回答です。一二年も先のことについて、今から借地人に。お願い”して円満解決を願っている地主の心情の一片も理解していません。また借家法が「正当事由」を規定しているから、これを認めるには引越し先の提供や 立退料を支払え、と当然のようにいうことは、昨今、あまりにも家主の犠牲(負担)が大きいことを知ったうえでのことでしょうか。もちろん、法律の専門家ですから引越し先の提供や立退料の支払いが莫大な金銭を伴うことはご存知のはずです。としたら、この回答は実に地主・家主泣かせの回答どいわざるを得ません。  ↓土地明渡しの一二年後、地主・借地人がどんな状況にあるのか、その間の地主の土地明渡しのための根回しは全くムダなのか、そしてまた家主としてはどんな手を打って借家人と話し合ったらよいのか 要するに、借地法や借家法の枠外の、生々しい現場での回答を親切にするのが真実の専門家です。弁護士も裁判官も、こと借地借家に関するかぎり、あまりにも法律にこだわった杓子定規の解釈と運用をし過ぎていると思います。借地借家法が目ざした弱者保護-しかし、いまの借地人・借家人が「弱者」でないことは、地主家主さんだけでなく、世人がすべて知るところです。  今日の借地・借家関係は、借地法や借家法の枠外で考える側面がなければ1つまり借地法や借家法を度外視した、貸主と借主の真の「実質的な平等」を直視したところでの解決が切に望まれるのです。

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