トップ > 平成29年7月> 15日

年金を食い物にする悪徳業者に感謝する老夫婦

2017年7月15日「土曜日」更新の日記

2017-07-15の日記のIMAGE
このケースは高齢者を食い物にした悪質ともいえる例です。年金を担保にお金を貸していいのは、公的な福祉医療機構のみとされていて、この場合は年金生活者に負担の少ない低金利での融資が用意されています。例をあげると、年金を担保に一五〇万円を借りると、その人が受け取る年金から二年間にわたって天引きされていくというものです。他のどんな業者も年金を担保に融資することは許されていないのですが、マチ金によっては年金証書を担保に取り、年金が入ってくる銀行口座とキャッシュカードを奪い取ってしまうところがあります。たとえば、二十万円の年金がその人の銀行口座に入金されたら、いったん全額をマチ金が銀行口座から引き出し、うち十万円をその人の別の口座に入れて返金するというのが手口の例です。銀行の口座は当然、年金を受け取っている人の名義なので、表向きはその人がお金を動かしているように見えますが、実際に口座を管理しているのは業者です。お金を借りた人から見れば、受け取るはずの二十万の年金から十万円を返済しているつもりです。業者から見れば、貸したお金を返してもらっているということなのでしょう。しかし、このような方法は法律で禁止されています。財津さんの場合は、郵便局の自動送金というシステムを使った手口でした。自動送金というのは家賃の払い忘れなどがないよう、一度登録すればどこどこにいくらという送金手続きを自動的に行ってくれるというシステムです。財津さんは某社から一〇〇万円の借り入れをする際、この先、振り込まれる年金の半分以上の額を某社に自動送金という形で返済する手続きをしていました。財津夫妻には貯蓄がなく、定年の際、夫が手にした退職金もほんのわずかでした。二ヵ月に一度振り込まれる年金は夫妻にとってまさに虎の子。とはいえ、どんなにつましく生活しても毎回二十万円を返済にあてていたのでは暮らしていけません。すると、二人はまたその業者に借りに行ってしまうのです。財津夫妻は延々十年間もそのような生活を続け、二ヵ月に一回、十五万円を借りていました。二十万円返して、十五万円を借りるわけです。「でもね、先生。あの人たちだって悪い人じゃないと思うんです。だって私たちのような高齢者にもお金を貸してくれるのですから。困ったときに助けてもらって、私たちは本当にありがたかったのです」財津さんの奥さまはそうおっしゃいました。基本的に収入のない高齢者にお金を貸すのは、リスキーです。しかし、年金で確実に返してもらえるということになれば、業者は六十万円、七十万円と貸し付け、必ず回収をして、かつその流れを断たないようにしながら回転させています。財津夫妻もすっかりそのサイクルにはまっていたのですが、ご本人たちはそんなからくりがあるとはつゆともご存じないので、ありがたいとさえ思っていらっしゃいます。無駄遣いもせず、質素に暮らしていた財津夫妻は、言い方は悪いですが、業者にはいいカモだったに違いありません。幸い、財津さんの娘さんご夫妻が不審に思って一緒に相談に来られましたが、見逃されていたら、財津夫妻はこれからもずっとお金を払い続けていたでしょう。そのような業者のひとつが電話で廃業を伝えてきたとき、思わず私は「無責任にもほどがある!とキレてしまいました。だって、どう考えても許せません。財津夫妻のように払いすぎている人たちに返金もしないで、何が廃業ですか。今までせっせと返済を続けてきた善良な方たちが廃業を知っても、だまされていたとも思わず、返済がなくなるだけでありがたい、お金なんて戻ってこなくていいとおっしゃるでしょう。正直者が損をするような世の中ではいけない。このような案件にふれるたび、そう感じます。

このページの先頭へ