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リビングが「大きな家事室」に変身!』

2017年8月27日「日曜日」更新の日記

2017-08-27の日記のIMAGE
実際の住まいを見ると、広いリビングは来客のためにあるようだ。ソファがでんと置かれていて、全体が飾りのようで、有効に使われていない。結局子どもたちもほとんど自室に閉じこもって、団らんどころかリビングの役目がないと思えるほどの家庭も多い。こうした家族に「欲しい部屋は?」と聞いてみると、大方の主婦は「家事室」といい、夫は決まって「書斎」という。いい換えれば夫婦とも欲しい部屋をあきらめてまで獲得したせっかくのリビングを、なぜか現実は有効に使っていないという、おろかな矛盾につながるわけだ。それならいっそ、このリビングをすべて家事室にしてしまったらどうだろう。「いや、それは困る。きちっとした接客もできるリビングルームは必要だ」との反論が出るかもしれない。が、なにもリビングをなくしてしまえ、というのではない。昼間、夫や子どもたちが会社や学校に行っている間は、妻の「大きな家事室」として全体を使い、夕方またもとのリビングに戻せばいい。 夕食後にまた広げて、今度は家族といっしょに作業を再開してもいい。考えてみれば、リビングとはまさに「生活の場」。家事は生活そのものなのだから、リビングがそのまま裁縫その他の趣味の創造的空間になってもいいはずだ。そこでまず、家事コーナーとしてすべてが納まる収納庫を居間の壁の一角につくる。その扉を開けると、中の棚、扉の内側がすべて家事逆具の収納場所になるようにし、さらに机になるべきボードを手前に引くと、その上で布を裁断したり、ミシンかけができるようになる。もちろん家計簿をつけたり、手紙を書いたりもできる。中に収納される腰掛けも、端ぎれや毛糸を入れられるようになっている。これはいわば、「収納式家事装置」で、これを開けばリビングはたちまち巨大な家事室に変身する。リビングのテーブルやソファセットも箱型にし、上ぶたの裏がアイロン台として使えるようにしておけば、娘たちといっしょにアイロンかけや、手芸などども楽しめるというわけだ。 扉一枚で夢の書斎を手に入る夫のための書斎も、同じ方法でリピングにつくることができるのだ。最近、家庭で「おやじの居場所」がなくなったといわれる。食卓やリビングで、父親が座る位置がはっきり決まっていない、ともいう。書斎はおろか、普段の居場所もないとは、一家のあるじの地位はすっかり下がったといわざるを得ない。会社人間の父親でも、五〇歳代に入ると家での読書や趣味の時間が得られるようになるのか、書斎の要望が増える。いざ家庭に戻ってみると、自分の座がなくなっていることに気づくのだろう。 わが城を求めなければと、一種のあせりを感じるのかもしれない。しかし、そこで自分が何をしたいか、何を求めているのかを、もう一度よく考えてみよう。本当に欲しいのは「落ち着き」だ。落ち着くための「場」が欲しい。食卓でいえば、自分のいすである。このいす一つで、その「場」と父親の権威を、同時に得られる。書斎はこうした父親の「場」を、明確に象徴するためのものだ。自由に仕事もできる。もちろん一人静かに読書にふけることも、仕事とは離れた書き物もできる。とはいえ、何も一人閉じこもる独立した部屋である必要はない。家事室と同じように、リビングから離れた小部屋など、冷暖房も大変で使いにくい。むしろ、リビングの片隅に、ライティングビューローのような「文机」でも置いたほうが、よっぽど便利である。この机、よく寝室などに置くことが多いのだが、現実には利用されないことのほうが多い。わざわざ冷えた寝室まで行くのが面倒だし、奥さんの安眠妨害となって夜中まで使えない。 こうしてみると、先の家事室と同様、轡斎も家族が集まるリビングのほうがいい、ということになる。しかも奥さんの家事コーナーと同じく、収納棚式がいい。木造の住まいなら、筋交いのない壁の内側をくりぬいて、そこにこの「書斎」収納棚を埋め込んでしまう。壁の内側には、一〇センチほどの空間がある。文庫本なら充分に入る奥行きなのだ。この棚に開閉可能な天板式の机を取り付け、クロゼットのような開き戸をつける。先の家事室とともに、この二つの収納棚をセットして扉を閉じれば、ほとんど出っ張りもない。広々したリビングはそのままだ。夜、おもむろに扉を開けて奥さんと二人、家事と読書で夜なべする。じつにほほえましい光景ではないか。

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